
電気工事の見積は、提示した金額の中で発注書通りの工事を行えるように、また電気工事業者がきちんと利益を確保できるように、正確に作成することが求められます。しかし、電気工事の見積における工事単価、また工事単価を算出するための材料費や労務費は案件ごとに大きく異なるため、材料の拾い出しや工事原価を算出する作業には時間がかかってしまいがちです。
そこで今回は、電気工事における見積の作り方、また見積を作る際に意識するべきポイントについて、わかりやすく解説していきます。
これまであまり見積を作成する機会がなかったという電気工事職人の方や、改めて見積作成の手順を確認し、効率化のヒントを探したいという電気工事業者の方は、参考にご覧ください。
- 1.電気工事の見積とは?積算とどう違う?
- 2.【5つのステップで紹介】電気工事の見積の作り方
- 3.【ステップ1】工事の概要を把握する
- 4.【ステップ2】過去の案件と比較する
- 5.【ステップ3】図面から情報を拾い出し、材料費を算出する
- 6.【ステップ4】工事の種類別に労務費を算出し、合計する
- 7.【ステップ5】工事原価に経費や利益を加算する
- 8.電気工事の見積を作成する際に注意すべきポイント
- 9.電気工事の見積作成を効率化するためにできること
- 10.まずは、電気工事の見積に使えるソフトの導入を検討する
- 11.案件確認など、計算以外の工程の効率化を図るのもおすすめ
- 12.電気工事のDXトータル支援サービス「DEN-UP(デンナップ)」
電気工事の見積とは?積算とどう違う?
電気工事の見積とは、発注者から提供される工事の内容や箇所、目的、規模、期日、希望予算等の情報をもとに、工事の実施に必要な費用を算出したものです。具体的には、電気工事そのものの施工にかかる工事原価に、現場を管理するために必要なコストである諸経費、また企業を運営していくのに必要な費用(利益)をプラスして計算していきます。
見積と混同されやすいものに「積算」がありますが、一般的に積算とは、工事にかかる労務費(施工費)に、照明や電気設備など電気工事で使用する材料の購入代金、機材や人員の手配・運搬費用、現場での建築物の仮設にかかる費用等を合計した工事原価のことを指します。
基本的に積算は、工事原価を社内で把握・閲覧するためのものであり、工事の発注者に見せるためのものではありませんので、注意が必要です。
発注者に対し、自社が電気工事を請け負った場合に支払って欲しい金額を示したい時は、先に工事原価である積算を求めた上で、そこに諸経費と利益を加算して見積を作成する必要があると理解しておきましょう。
【5つのステップで紹介】電気工事の見積の作り方

電気工事における見積とは何かを理解できたら、次は、電気工事の見積の作り方について具体的に見ていきましょう。以下に、電気工事の見積を作成する際の基本の流れを5つのステップに分けて説明していきますので、ひと通りご確認ください。
【ステップ1】工事の概要を把握する
まずは、見積作成を求められている工事の概要について確認しましょう。工事の仕様書と工事予定の建物・施設の設計図をひと通りチェックし、以下のような項目を大まかに把握します。
- どのような建物や施設に、どのような工事を実施するのか
- どのくらいの規模、台数の電気工事をする必要があるのか
- 自社で電気工事を実施するに当たり、必要な設備は何か
【ステップ2】過去の案件と比較する
仕様書と設計図から発注者が希望する電気工事の概要、条件が見えてきたら、建物や施設の用途、大きさ、設備、工事規模などを基準に、自社実績の中から類似案件を探してみましょう。
見積は、工事に必要な単価を確認して積み上げていく作業ですから、過去に自社で実際に見積・受注したケースを参考にできれば、この次の工程である計算作業がスムーズになります。
ただし、過去の案件を参考に工事単価を算出する場合でも、経済状況の変化や物価、人件費の変動を考慮し、それぞれの単価を修正する必要はありますので、注意してください。
なお正式な見積ではなく、概算見積のみ作成するという場合は、過去の類似案件における材料費や労務費等をそのまま参考値として採用し、おおよその見積を作成するケースもあります。
【ステップ3】図面から情報を拾い出し、材料費を算出する
参考資料が揃ったら、ここからはいよいよ計算作業に入ります。設計図の工事個所から部材の種類とそれぞれの数量を、また建物の面積等から部材のサイズやコードの長さなどを拾い出していき、電気工事にかかる材料費を求めましょう。
なお部材の種類・数量の拾い出しが正確にできていないと、工事全体の見積額に狂いが生じるだけでなく、この後に計算する労務費も正しく算出できなくなってしまいます。時間がかかりますが、非常に重要な工程なので、しっかりと図面を確認しながら作業を進めてください。
またこの段階までに、今回の工事対象となっている建物や施設、設備に関する法律(建築基準法や消防法等)や工事予定地の自治体における条例についても確認しておく必要があります。
関係する法律や条例の改正を確認しないまま電気工事を実施すると、違法工事になってしまうリスクもありますので、注意が必要です。
【ステップ4】工事の種類別に労務費を算出し、合計する
電気工事で設置する器具の数量や作業内容が明確になったら、労務費を算出していきます。
労務費は「スイッチの配線・設置工事」「照明取り付け工事」などのように、工事の種類ごとに以下の式で算出し、合計金額を導き出すのが一般的です。
- 器具の種類別台数×歩掛×人件費(労務単価)
歩掛(ぶがかり)とは、一つの工事を行うための作業量を数値化したものです。具体的な数値は工事の内容や規模、現場の状況、工事を担当する職人の経験の違い、民間工事の場合は工事業者の規定によっても異なります。
例えばLED照明10台を設置する電気工事を、1台当たり0.3時間で取り付けられる職人に、1時間当たり8,000円の人件費を払って依頼したい場合の労務費の計算式は、以下のようになります。
- LED照明(10台)×歩掛(0.3時間/1台)×8,000円(1時間当たり)=24,000円
なお歩掛を使えば、1人の作業員が1日8時間働いてできる作業量である人工(にんく)を算出することも可能です。歩掛を基準に算出した「1人の作業員が1日にできる作業量」のことを1人工と言い、工事によっては、人件費と人工を掛け合わせて労務費を計算するケースもあります。
複数の工事業者や職人が入ることになる大規模な現場や、人工を使わなければ作業量の概算が難しい場合等はこちらの計算方法が使われますので、併せて覚えておくと良いでしょう。
【ステップ5】工事原価に経費や利益を加算する
ステップ4までで求めた材料費、各種工事の労務費をすべて合算した金額が、工事原価となります。この工事原価に、電気工事一式にかかる諸経費と自社の営業利益を加算すれば、見積作業はひと通り完了です。
部材の拾い出しに漏れがないか、計算内容に誤りがないかを再度確認した上で、見積書として発注者に提出しましょう。
電気工事の見積を作成する際に注意すべきポイント
電気工事業者が、見積を作成する際に注意するべきポイントとしては、以下が挙げられます。
- 一度見積を提出してしまうと、その後の金額の修正・変更は難しくなる
- 手間と時間をかけて見積を作成しても、工事を受注できない場合もある
発注者は、電気工事業者に提示された見積額を見て、工事を依頼するかどうかを決定します。
電気工事業者には、提示した見積額の範囲内で工事を完了させることが求められるため、仮に見積の提出後に見落としていた工程に気が付き、必要な器具や部材の手配のために追加費用が発生したとしても、その請求を発注者に認めてもらえる可能性は低いと言えるでしょう。
そのため見積時には、できるだけ正確に積算を行わなければなりませんが、多大な労力を割いて見積を作成しても工事を受注できるとは限りません。提出した見積の金額や内容が発注者の希望と合わなければ、見積作成にかけた手間や時間が無駄になってしまうこともあります。
電気工事の見積を作成する際は、赤字工事にならないように正確に、かつ効率よく計算作業を進めることが大切です。案件ごとにかけるべきリソースを適切に見極めた上で、見積を行いましょう。
電気工事の見積作成を効率化するためにできること

ここまでに見てきた通り、電気工事のための見積作成には非常に手間と時間がかかります。
しかし作業の一部をIT化・デジタル化すれば、見積作成の効率を向上させることも可能です。
そこで以下からは、電気工事の見積作成を効率化するためにできることを、具体的に2つ紹介していきます。
電気工事の見積作成を効率化する方法を探しているという方は、ぜひ参考にご覧ください。
まずは、電気工事の見積に使えるソフトの導入を検討する
近年、複数の企業が工事業者向けの「積算ソフト」「見積ソフト」を開発・販売しています。
これらのソフトのうち電気工事に対応しているものを導入すれば、製作した図面からの部材の拾い出しや歩掛の設定、積算を簡単に行えるようになるため、見積の効率化が可能です。
CAD等ほかのソフトで作成した図面や、手書きの図面を取り込んで見積作成を行えるソフトもありますので、まずは自社に合った見積ソフトの活用を検討してみましょう。
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案件確認など、計算以外の工程の効率化を図るのもおすすめ
電気工事の見積作業のうち、計算以外に効率化が可能な工程としては、類似案件の洗い出しが挙げられます。あらかじめ過去の実績や案件の情報をデータ化しておき、さらにアプリで物件や現場の情報を検索できる状態にすれば、案件確認をスムーズに行えるようになるでしょう。
自社における過去の実績、類似案件を探すのに便利なアプリの具体例としては、案件別に顧客や物件等の情報を一元管理できる「KANNA」が挙げられます。連絡ミスの削減や見積作成以外の業務効率化にも役立ちますので、見積ソフトと併せて導入を検討してみてください。
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