
工場や施設、一般家庭等において電気を作る・送る・使うための設備を、電気設備と言います。電気設備の設置やメンテナンスは、電気工事会社の主要業務の一つと言えるでしょう。
そこで今回は、電気工事業者が取り付けることになる電気設備の耐用年数について、基本的な電気設備の分類や、設置した設備を管理・整備する方法にも触れながら解説していきます。
電気工事を実施するにあたり、取り扱う電気設備や電気工作物の耐用年数について知っておきたいという方は、ぜひ参考としてご確認ください。
電気工事で取り扱う電気設備の分類とは

耐用年数の前に、まずは電気設備の定義や基本的な分類について、確認していきましょう。
冒頭でも少し述べたように、電気設備とは電気を作る・送る・使うための設備の総称です。
さらにそこから、それぞれの役割によって大きく以下の3つの種類に分けられています。
発電設備 | 電気を作る、または蓄積する電気設備のこと。代表的な例としては水力発電、風力発電、火力発電、原子力発電の設備や蓄電池などが挙げられる。 |
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送配電設備 | 電気を利用者のもとまで送る、届ける電気設備のこと。具体例としては送電線や配電線等の電線、送り先に合わせて電圧を変える変電所などがある。 |
構内電気設備 | 送配電設備で送られてきた電気を使うための電気設備のこと。コンセント設備や電灯など一般的な家電、放送設備、防災設備、動力設備等が該当する。 |
また、上記以外に広義での電気設備に該当するものとしては、電気工作物が挙げられます。
電気工作物とは、送電・配電・蓄電などを通して送配電設備と構内電気設備を結ぶ役割をするもので、さらに「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」の2種類に分けられます。
電気工作物の分類
一般用電気工作物は、比較的小規模な発電設備のことで、主に一般家庭や小規模な商店、事務所、コンビニ等の屋内配線や太陽光発電、蓄電設備等のことを指します。
対して事業用電気工作物とは、電力会社や工場、学校、商業ビル、病院など、一般的な住宅や小規模な商業施設よりも多くの電気を使用する施設に設置されるものです。なお事業用電気工作物は、用途や取り扱う電力量、電圧の大きさにより、さらに以下の2種類に分類できます。
- 小規模な発電所や工場等に発電用設備として設置される「小規模事業用電気工作物」
- 送電されてきた電気を施設や工場の使用に適した電圧に変換する「自家用電気工作物」
ちなみに、商業施設や集合住宅における電気工事で携わることの多い受変電設備(キュービクル)は、自家用電気工作物にあたります。代表的な電気設備、電気工作物の種類と一緒に覚えておくと良いでしょう。
電気工事で設置する電気設備の耐用年数について

耐用年数という言葉には、「物理的・機能的に利用可能な期間」と「物理的・機能的に利用可能であり、かつ資産としての価値がある期間」という2つの意味合いがあります。
前者は実用耐用年数や利用可能年数、後者は法定耐用年数とも呼ばれるものですが、一般的に耐用年数と言うと、後者の法定耐用年数を指すことが多いでしょう。
その製品や設備等に資産としての価値が認められ、減価償却が可能な期間である法定耐用年数は、国税庁によって明確に定められています。国税庁が公開している「主な減価償却資産の耐用年数表」によると、工場や商業施設、一般住宅等の建物に電気工事で取り付ける電気設備の法定耐用年数は、それぞれ以下の一覧の通りです。
具体的な電気設備の例 | 法定耐用年数 | |
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蓄電池電源設備 | ・蓄電池 ・充電器及び回転変流器を含む整流器 ・これらに付属する配線や分電盤等 |
6年 |
その他のもの | 【工場以外の建物の場合】 ・受配電盤 ・変圧器 ・蓄電器 ・配電施設等の電気施設 ・電灯用配線施設及び照明設備 ・内燃力発電設備 【工場用建物の場合】 ・電灯用配線施設及び照明設備 |
15年 |
【参考】第2節 建物附属設備|国税庁
なお電気設備は建物の付属設備として、通常は建物と区別して法定耐用年数を設定しますが、木造建物の電気設備については建物の一部に区分されるため、木造建物と同じ法定耐用年数が適用されます。
木造建物の法定耐用年数は構造や用途によって異なりますので、木造建物の電気設備を設置・メンテナンスする時は、事前に確認しましょう。
電気工作物の法定耐用年数は?
国税庁の「耐用年数の適用等に関する取扱通達の付表」によると、電気工作物のうち、自家用電気工作物である受変電設備の法定耐用年数は15~22年です。
なお電気工作物の法定耐用年数は、用途や設置場所等により変わってくるケースもあります。自社の電気工事で取り扱う電気設備、電気工作物の正しい法定耐用年数を知りたい場合は、必ず最寄りの税務署に問い合わせて確認するようにしてください。
電気設備の実用耐用年数は?
電気工事で取り付けた電気設備、電気工作物を安全に利用できる期間である実用耐用年数は、設備や機器の種類・メーカー・使用状況などにより大きく変わってきます。
ただ一般的には、20~25年程度が目安だと言われていますので、併せて覚えておきましょう。
電気工事業者が耐用年数に配慮して工事を行うべき理由
電気設備や電気工作物は使用期間が長いほど、耐用年数に近づくほど、トラブルや故障が発生しやすくなります。だからこそ工事担当者には、耐用年数を考慮した上で適切な電気設備の種類や設置方法、メンテナンスのタイミングについて提案し、電気工事を実施することが求められるのです。
なお、適切な頻度で電気設備、電気工作物の点検や整備を行わなかった場合に、設備の所有者・使用者に起こり得ることとしては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 電気設備における電力の使用効率が低下し、電気料金等のコストが増大する
- ケーブルの損傷や劣化、接触不良等により、漏電や感電が発生しやすくなる
- 上記のような老朽化で発生した漏電が原因で、火災が発生するリスクが高まる
- 電気機器や配線が過負荷等で損傷し、生活や業務、防災に悪影響が及ぶことも
- 建物全体の停電のほか、近隣一体が停電する波及事故が起こる可能性がある
適切な頻度で電気設備の点検や電気工事を実施すれば、事故や故障等のトラブルを避け、設備の寿命を延ばすことも可能です。
自社が設置した電気設備を、少しでも長くお客様に使い続けてもらうためにも、電気工事会社が電気設備や電気工作物の耐用年数を把握し、管理することが望ましいと考えられます。
電気工作物の所有者・使用者には、保安点検の法的義務もある
電気工作物のうち自家用電気工作物の所有者や使用者には、定期的に電気保安点検を実施し、その結果を記録・保存することが電気事業法で義務付けられています。
【参考】電気事業法|e-Gov 法令検索
安全上の理由だけでなく、電気設備を所有・使用する者の義務についてお客様に知らせ、電気設備の点検や整備が適切に行われるように促すのも、電気工事業者の重要な役割の一つです。
この点も、電気工事業者が電気設備の耐用年数を考慮して工事に臨むべき理由として、覚えておくと良いでしょう。
耐用年数を踏まえた電気工事のためにできることは?
耐用年数を考慮した電気工事の提案、実施のために電気工事会社ができることとしては、自社の案件とお客様情報を一元管理することが挙げられるでしょう。
過去に自社で手掛けた工事内容、施工時期、顧客情報等をデータ化し、アプリに登録しておけば、取り付けた電気設備の耐用年数の管理と社内での共有、適切なタイミングでの電気工事の提案がしやすくなります。
また業務効率化という意味でも、案件管理をデジタル化することは、メリットが大きいと言えます。自社が取り付けた電気設備を適切に維持管理するために、また顧客満足度を高めるためにも、事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を積極的に検討してみて下さい。
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