
建設工事の見積もりや積算において、労務費の算出はプロジェクトの採算を左右する極めて重要な工程です。
熟練した担当者の経験値は、施工条件や作業効率を直感的に把握できる大きな強みである一方で、近年は工事の条件やコスト構造が複雑化し、経験だけでなく数値に基づいた積算の重要性も高まっています。そこで活用されるのが「歩掛」です。
本記事では、積算初心者の方から精度を高めたい方まで役立つよう、歩掛の基本的な考え方や計算方法、活用するメリット、管理のポイントを解説します。
- 1. 「歩掛」とは?積算における重要性
- 2. 歩掛の定義とメリットとは?
- 3. 積算での役割は?
- 4. 歩掛を使った必要人工と労務費の計算方法
- 5. 必要人工の計算方法
- 6. 労務費の計算方法
- 7. 標準歩掛・自社歩掛・補正係数とは
- 8. 国が定める「標準歩掛」
- 9. 標準歩掛を補填する「補正係数」
- 10. 実態を反映した「自社歩掛」
- 11. 【作成手順】自社歩掛の作り方
- 12. STEP1. 作業単位を設定する
- 13. STEP2. 工事日報から実績データを集める
- 14. STEP3. 歩掛を算出する
- 15. 歩掛を管理する3つのポイント
- 16. ポイント1. 最新の歩掛・労務単価を確認する
- 17. ポイント2. 積算ソフトを利用する
- 18. ポイント3. 施工管理アプリを利用する
- 19. デジタル化で根拠のある労務費を
- 20. DXトータル支援サービス「DEN-UP」でさらに便利に!
「歩掛」とは?積算における重要性
まずは「歩掛(ぶがかり)」の定義と活用するメリット、積算での役割について確認しましょう。
歩掛の定義とメリットとは?
歩掛とは、ある一定の作業を行うために必要な作業量を数値化した指標です。簡単に言うと「コンセントを1個設置するのに、作業員1人だと約2時間分の作業量」といった具合に、1つの作業にかかる単位作業あたりに必要な人工量(人日)となります。
後ほど詳しく解説しますが、歩掛は国が提示する標準的な数字があり、この標準を元に計算することもできますし、自社独自の歩掛を設定して活用することもできます。
歩掛を活用すれば、作業工程ごとの負荷を定量的に捉えられるので、誰が担当してもばらつきのない、根拠ある積算が可能になります。
積算での役割は?
単純に人件費を計算するだけであれば、大まかな工事日数から計算できます。しかし、この方法だけでは工事の作業量との関係が明確にならないという問題があります。なぜなら、工事の規模や作業のボリュームが変われば、当然それにかかる人数や日数も変わるからです。
歩掛を基準に据えることで、労務費に裏付けが生まれ、積算の精度が大きく向上します。その結果、利益を削る過小見積や、失注を招く過大見積といったリスクが未然に防げるようになります。
歩掛を使った必要人工と労務費の計算方法
次に、具体的な計算式を用い、歩掛からどのように労務費を導き出すのか、その手順をまとめていきましょう。
必要人工の計算方法
歩掛は「人工(にんく)」という単位で表されます。人工とは、作業員1人が1日(一般的に8時間)働く作業量を指します。
【歩掛の具体例】
| 作業内容 | 歩掛 | 数量 | 必要人工 |
|---|---|---|---|
| コンセントの設置 | 0.2人工 | 20個 | 4人工 |
| 配線工事 | 0.01人工/m | 500m | 5人工 |
| 照明設置 | 0.15人工/台 | 30台 | 4.5人工 |
まずは1作業あたりに必要な人工、つまり「1つの作業について、作業員1人あたり1日8時間労働で、何時間・何日間かかるか」を計算していきます。計算方法は、トータルの作業数量に、設定された歩掛(1作業あたりの人工)を掛けて算出します。
【必要人工】
必要人工 = 作業数量 × 歩掛(1作業あたりの人工)
例えば、床施工1㎡あたり0.05人工(8時間×0.05=0.4時間:24分)の歩掛に対し、「床施工100㎡」の施工依頼があった場合の必要人工は、次のようになります。
100(数量) × 0.05(歩掛) = 5人工(8時間×5日間)
つまり、「作業員1人なら5日間、5人なら1日で施工できる作業量」という意味になります。
労務費の計算方法
必要人工が算出できれば、労務費が計算できます。計算方法は、必要人工に対して、労務単価を掛けます。
【労務費の計算式】
労務費 = 必要人工 × 労務単価
なお、労務単価は国土交通省の「公共工事設計労務単価」や、自社の給与体系などを基準に設定します。
標準歩掛・自社歩掛・補正係数とは

積算で使用する歩掛には、標準歩掛と自社歩掛の大きく2種類があります。また、標準歩掛を微調整する役割として補正係数という数値が存在します。
それぞれ、使用目的とデータの根拠が異なるため、必要に応じて使い分けていくのが労務費算出時の基本です。
国が定める「標準歩掛」
標準歩掛とは、国土交通省が公開している積算基準の歩掛です。
【主な資料】
- 国土交通省積算基準
- 建設物価
- 積算基準書
過去の膨大な施工データをもとに算出されているため、公共工事では積算基準として使用されます。
ただし、標準歩掛はあくまで標準的な施工条件を前提としているため、実際の現場と完全に一致するとは限りません。
この誤差をカバーするのが補正係数です。
標準歩掛を補填する「補正係数」
補正係数は、基準となる標準歩掛に対して、工事現場の特殊な環境や、時間的な制約を考慮して、人工数を増減させる数値です。
具体的には、高所作業や狭小地、隠蔽配線などは、作業効率が低下しやすい環境であり、これらの現場条件を考慮しないと誤差が生じます。また、現場閉所や深夜・早朝勤務による割増も必要です。
歩掛の補正係数は、国土交通省の積算基準などの公的資料にも掲載されています。しかし自社の施工実績が最も現場に近い数値になるため、過去の施工実績や現場条件を踏まえて設定するのが一般的です。
実態を反映した「自社歩掛」
自社歩掛とは、自社の施工実績をもとに作成した独自の歩掛です。
実際の施工では、職人の熟練度や現場条件、使用機材などによって、作業効率が変わります。自社歩掛は過去の施工実績に基づいて数値を設定するため、標準歩掛に比べて、より実態に即した労務費が算出できます。
特に民間工事では、この自社歩掛を整備することが、他社との差別化や適正利益の確保に繋がっていきます。
【作成手順】自社歩掛の作り方
次に、自社独自の歩掛について見ていきましょう。
【自社歩掛の作成手順】
- 作業単位を設定する
- 工事日報から実績データを集める
- 歩掛を算出する
STEP1. 作業単位を設定する
まず、作業を計測できる単位に分解します。
【作業単位の例】
- コンセント1個
- 配線1m
- クロス1㎡
STEP2. 工事日報から実績データを集める
次に、工事日報から施工実績を収集します。
【必要な情報】
- 作業人数
- 作業時間
- 施工数量
これらのデータが、歩掛の根拠になります。より実態に近い歩掛を算出するには、複数の施工データから平均値を取得するのがポイントです。
STEP3. 歩掛を算出する
集めたデータを使って、歩掛を算出します。
計算方法ですが、1つの作業単位について、実際にかかった時間から1日の労働時間(8時間)を割って計算します。
【歩掛の計算方法】
歩掛 = 実際にかかった時間 ÷ 8時間
例えば、コンセントの増設工事1箇所を施工するのに4時間かかった場合、4時間を8時間で割って、歩掛は0.5人工となります。
もし、作業単位あたりの時間数が不明で、総人工・施工数量がわかる場合は、総人工を施工数量で割ることで、歩掛が算出できます。
最後に、算出した数値を1つの表にまとめておきましょう。歩掛をまとめた表は、一般的に「歩掛表」と呼ばれています。
歩掛を管理する3つのポイント

歩掛は整備して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。どのように調整する必要があるのか、歩掛を管理するポイントをご紹介します。
【歩掛を管理する3つのポイント】
- 最新の歩掛・労務単価を確認する
- 積算ソフトを利用する
- 施工管理アプリを利用する
ポイント1. 最新の歩掛・労務単価を確認する
標準歩掛や補正係数、労務単価は毎年更新されます。
古いデータを使用すると、現在の物価や給与水準と乖離し、見積もりの精度が下がったり、利益を圧迫したりと、大きな損失を招く恐れがあります。最新の公的データが更新されたら、必ず自社の歩掛表も更新しましょう。
ポイント2. 積算ソフトを利用する
積算ソフトとは、図面から工事に必要な材料や労務費を自動計算・集計してくれるシステムです。CADとの連携が可能なものや、アップロードした図面から拾い出しをしてくれるもの、自社独自の補正が掛けられるものなどがあり、歩掛管理や積算・見積もり作成業務の負担を軽減してくれます。
公的な標準歩掛や労務単価が更新されると、自動で新しい情報が反映されるのも嬉しいメリットです。
ポイント3. 施工管理アプリを利用する
自社歩掛を整備するには、施工データを継続的に蓄積する必要がありますが、紙の日報やExcel管理では、データの集計や分析に手間がかかります。
このような課題を解決してくれるのが、施工管理アプリです。
施工管理アプリとは、工事日報や工程表、工事写真などのデータを一箇所で管理できるデジタルツールです。データ管理の他、案件別のチャット機能や工程管理、図面への朱書き機能など、施工管理に役立つ機能が1つにまとまっている、大変便利なツールとなっています。
施工管理アプリを利用すれば、作業工数の集計がラクになりますし、過去の案件データもスムーズに見つけることができます。さらに、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも利用できるため、場所を選ばずリアルタイムで操作・共有できるのもメリットだと言えるでしょう。
デジタル化で根拠のある労務費を
積算は施工条件や熟練度、段取力、現場環境によって差が出るので、「絶対的な正解」を目指すのではなく、「合理的な基準値」を目指す視点が欠かせません。
さまざまな条件下で、より実態に近い労務費を算出するための重要な指標が歩掛であり、うまく活用することで、見積もりの再現性と妥当性が担保できます。
また、標準歩掛を参考にしつつ、施工実績や工事日報を活用して自社歩掛を整備していけば、見積精度が高まるだけでなく、自社の大きな強みにもなっていきます。
積算ソフトや施工アプリを活用して、効率よく、精度の高い積算を実現していきましょう。
DXトータル支援サービス「DEN-UP」でさらに便利に!

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