電気工事における積算とは、その工事に必要な材料や工程を把握し、材料費や人件費、工事に使う設備の手配や運搬費用、現場の管理費等を合算して工事原価を算出する作業のことです。

そこで今回は、赤字工事の受注を避けて電気工事でしっかりと利益を確保するため、また根拠ある計算で顧客から信頼を得るための積算の基礎知識について、まとめて紹介していきます。

一般的な計算の流れや方法はもちろん、作業を進める上での注意点も解説していきますので、電気工事における積算の基本について確認したいという方は、ぜひ参考としてご覧ください。

電気工事における積算の重要性とは?

先述した通り、積算とは工事を実施した際にかかると考えられる費用、工事原価を算出する作業のことです。

電気工事を実施する前に積算を行う意味・理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 工事の受注前に、その電気工事にかかる時間や工程を把握するため
  • その電気工事に必要な材料、人員、作業、設備、予算を明確にするため
  • 発注書に沿った質の高い電気工事を、黒字で終えられるようにするため

一般的に発注者に提示する見積額は、工事原価である積算額に諸経費や営業利益をプラスし、黒字になるように算出します。また見積額は、発注者が工事業者を選ぶ際の大きな決め手の一つとなるため、一度提示した後に金額の修正・変更が認められることは基本的にありません。

事前に工事内容と作業時間をある程度把握して必要な費用を積算できていないと、実際に工事が始まってから予算オーバーしたり、予算不足で工事の質が下がってしまうリスクがあります。

積算を正確に行うことは、電気工事会社である自社の利益を守るために、また発注者が望む内容と質の電気工事を期日までに確実に終えるためにも、重要なのだと理解しておきましょう。

電気工事の積算で使用する「3つの用語」を理解しよう

適切に工事単価を設定して赤字工事の受注を避けるには、大きく積算基準、労務単価、歩掛(ぶがかり)の3点について理解し、考慮した上で積算の作業を進めることが求められます。

そこでここからは、電気工事の積算に不可欠な積算基準、労務単価、歩掛とは何か、それぞれの役割と併せて確認していきましょう。

【電気工事の積算用語1】積算基準

積算基準とは、主に公共工事の価格の適正化と積算作業の効率化を目的として、国土交通省が定めたガイドラインのことです。工事ごとの定義や部材の規格、工事単価を算出する時の基準、方法など、各種工事の内容や条件の考え方について定義づけし、積算を行う上での基準を示すものですが、あくまでガイドラインであり、使用について法的な強制力はありません。

ただ、発注者に対して積算額や見積額の妥当性を説明する根拠となることから、公共工事ではもちろん、各種の民間工事においても積算基準を採用、または参考にすることが多いです。

電気工事の積算基準は、国土交通省サイトの「公共建築工事標準単価積算基準」「電気通信関係積算基準等」のページでそれぞれ確認できますので、積算を行う際の参考にすると良いでしょう。

【電気工事の積算用語2】労務単価

労務単価とは、工事を行う職人や作業員1人当たりに支払う賃金、人件費のことです。労務単価の中には基本給のほか、各種の手当やボーナス、福利厚生費、社会保険料、弁当などを現物支給するための費用等も含まれています。

工事原価のうち、材料費以外の費用である労務費(施工費)の算出に不可欠な労務単価は、公共工事においては都道府県別に国土交通省が制定した「公共工事設計労務単価」を採用することが義務付けられています。

一方で民間工事においては、必ずしも公共工事設計労務単価を採用する義務はありませんが、これを参考に労務単価を設定し、積算を行うのが一般的です。そのため電気工事のための積算も、年度ごとに更新される公共工事設計労務単価を確認・参照の上、進めると良いでしょう。

【電気工事の積算用語3】歩掛

歩掛とは、一つの工事が完了するまでの作業量を数値化したものです。工事ごとの作業時間、日数、人数等を数値化したもので、労務費を積算する際に使う係数のようなものと言えます。

なお歩掛の具体的な数値や単位は、工事の内容や規模、条件、工事業者の規定のほか、作業員の熟練度等によっても異なりますが、代表的なものとしては人工(にんく)が挙げられます。

人工とは、作業員1人が1日にできる作業量の単位のことです。1人の作業員が1日8時間のうちに対応できる作業量を「1人工」と言い、人工を歩掛として労務費を計算する場合もあります。

複数の職人や工事業者が入るような大きな現場では、積算の際の歩掛の設定基準も複雑になります。もし、工事ごとの作業量や人工の設定に迷ったら、先述の「公共建築工事標準単価積算基準」を参考に積算を進めると良いでしょう。

電気工事の積算をする時の大まかな流れを紹介

ここからは、電気工事の積算を行う手順を大まかに紹介していきます。電気工事の原価を算出するための流れは、以下の通りです。

  • 工事の仕様書や設計書をもとに工事の内容や規模、対象の建物や施設について把握する
  • 建物や施設の用途、大きさや工事規模等を基準に、過去の実績から類似する案件を探す
  • 工事対象となっている建物や施設、設備に関する法律や自治体の条例を確認する
  • 設計図から工事に必要な部材の種類、サイズや長さ、数量を正確に拾い出していく
  • 類似案件も参考にしながら、工事に使う部材の種類と量をもとに材料費を算出する
  • 工事に必要な器具の台数、作業内容をもとに、工事の種類別に労務費を算出していく
  • すべての材料費、労務費が出揃ったら、人員や機材の手配・運搬費用、現場の管理費用も考慮しながら合算し、積算額とする

なお積算、また見積の計算方法の詳細や労務費の計算式、具体的な計算例については、以下の記事でご紹介しています。自社の工事原価、工事価格の考え方、見積の作り方についてより詳しく知りたいという方は、ぜひこちらも併せてご確認ください。

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電気工事の積算をする上での注意点まとめ

ここまでに見てきた通り、積算は電気工事業者が利益を確保し、質の高い工事を実施する上で非常に重要な作業です。そこで以下からは、電気工事のための積算を行う際に知っておくべき、また意識するべき3つの注意点について、順に紹介していきます。

自社における積算の精度、効率を向上させるためのヒントとして、ひと通りご確認ください。

図面からの部材の拾い出しは、できるだけ慎重に

設計図からすべての工事箇所、必要な器具の種類や台数、配線の長さ等を拾い出すのは、非常に時間と手間のかかる作業です。しかし、この部材を拾い出す工程でミスがあると、材料費だけでなく全体の積算額にも狂いが生じ、赤字工事のリスクが高まるため注意が必要です。

手作業で部材の拾い出しを行うなら、ある程度の時間をかけてでも、慎重に進める必要があると覚えておきましょう。

必ず「予想外の追加費用」が発生するリスクも考える

冒頭で少し触れたように、一度発注者に見積を提示してしまうと、金額を修正することは難しくなります。そのため電気工事の積算を行う際には、図面の見落としや現場状況の確認不足による以下のような事態に備えて、工事原価を計算しておくことも大切になってくるのです。

  • 電気工事に必要なのに、積算時に計算に入れていない機材や設備、器具があった
  • 難しい工事箇所があったのに、余裕を持った作業時間や人員の設定をしていなかった
  • 積算時の工程や作業時間の見積もりが甘かったために、工事の開始後に自社から応援を依頼していた協力会社が着工できず、費用だけがかさむ事態が発生した
など

積算の際は、いかに時間やコストがかかる危険な工事箇所を見極められるかが重要になってきます。自社がきちんと利益を獲得できるように、追加費用が発生するリスクも考慮しながら積算作業を進めましょう。

積算の作業に割く時間、工数にも注意が必要

自社の利益確保に配慮した正確な積算を行っても、実際に工事を受注できるとは限りません。
提出した見積額が発注者の希望と合わなかった場合や、競合他社がより魅力的な見積内容を提示した場合等は、工事を受注できず、積算にかけた工数や時間が無駄になることもあります。

そのため積算作業には、正確性と同じくらい効率性も求められます。案件の規模や内容ごとに積算にかけられる時間や人員を適切に見極め、効率的に計算を進められるようにしましょう。

なお積算の効率化には、積算ソフトの導入や案件の管理・検索に使えるアプリの導入等、一部業務のIT化、及び事業全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が効果的です。

電気工事のための積算の効率化、またこれによる社員の労働環境改善を達成したいと考えているなら、積算ソフトや案件管理アプリを活用した自社のDX化もぜひ検討してみてください。

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